プログラムレポート


木材加工に挑戦! 講座の様子(2023年6月11日開催)

6月11日は杣プロジェクトの坪井建憲先生と安池林業四代目の安池勘司先生のご協力で、「木材加工に挑戦!」講座を開催しました。

2023年6月11日木材加工に挑戦!

 

■「杣」って何?

「木」と「山」。

小学生の参加者の皆さんもよく知っている2つの漢字ですが、この2つが合わさった「杣」という漢字は何と読むのでしょうか。

2023年6月11日木材加工に挑戦!

答えは「そま」です。

 

杣とは木を植え付けて育て、材木をとる山。「杣木(そまぎ)」「杣山(そまやま)」の略だそうです。

そして、木に携わる人のことを「杣人(そまびと)」と呼びます。

 

杣プロジェクトでは、少し広く解釈をして林業に携わる人だけでなく、杣木を使って生活する人のことも「杣人」として考えています。

2023年6月11日木材加工に挑戦!

人と人とがつながり、海や水の青と森の緑ともっと近くて良い関係を築けるようにという願いを込めて、杣プロジェクトのロゴは作られています。

 

■林業士の仕事

まず初めに安池先生から林業士のお話をしてもらいました。

2023年6月11日木材加工に挑戦!

林業士とは、ただ木を伐るだけではありません。

  1. 木を伐ったところに小さな子どもの木を植える
  2. 伸びてきた木の周りの環境を整えて木が伸びやすいようにする
  3. 20年くらい育った木の間にもっと大きく育つための隙間を開けるために、周りの木を間伐して木材として出荷をする
  4. 40年くらい育った木をさらに間伐して出荷をして、残った木がもっと大きく育つように環境を整える

 

今、安池先生が伐っている木は、安池先生のお爺さんが植えた木だそうです。

山から木がなくなってしまわないように、「木の畑」を何十年もの時間をかけて守り続けているのが林業士のお仕事なんですね。

 

間伐した木は住宅や家具など色々な身のまわりのことに使われます。

残った木はもっと大きく伸び伸びと育って、光合成をして二酸化炭素を吸って酸素を出します。

 

実際の山の様子を動画で見せてもらいました。

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この山の中の道も林業士さんが作ります。

 

よく見ると道の右側と左側で明るさが違います。

間伐がしてあるところは木と木の間隔が広く日の光が良く入っています。

これから間伐をするところは、木と木の間隔が狭く、暗くなっています。

 

木を伐る時にも技術が必要です。

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木を倒す方向に、三角の切れ込みを入れます。

この切れ込みの入れ方で木が倒れる向きが決まってしまうので、きちんと方向を確認します。

特に、たくさん木が生えているところでは、他の木にぶつからない向きに木を倒さないといけないので、きちんと狙いを定めます。

「安全に仕事をするためには慌てないことが大事」と先生が言っていました。

 

三角の切れ込みを入れたら、切れ込みの反対側にもチェーンソーを入れて、ハンマーでくさびを打ち込みます。

すると・・・木と木の間にきれいに倒すことが出来ました!凄いですね!

 

伐り倒した木は、その場でプロセッサー(造材機)という機械で、長さを測りながら切ります。

チェーンソーがついているアームで倒した重たい木をつかみ、枝を払いながら長さを測って切ります。

「動画で4メートルって言ってたけど、4メートルってどのくらいの長さかな?」先生が見せてくれました。

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「これで3メートル」

 

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「このくらいが4メートル」

 

4メートルの丸太となると重さもとても重たく、大人6人でも運ぶのが大変です。

色々な機械を使うことで、これまでよりも素早く、精密に、木を運んだり、加工したりすることが出来るようになりました。

 

長さを測って切った木は、クローラートラックに乗せて運びます。

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クローラートラックは急な山道でもグイグイ進むことが出来るトラックです。

道路を走るトラックとは、タイヤが違いますね。

 

■木を加工する様々な仕事

伐った丸太は製材所に運び、形を整えます。

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板にしたり、角材にしたり、木を乾燥させて使いやすい形にするのが製材所の仕事です。

 

製材所には製材のプロフェッショナルの人がいます。

どこを切ればきれいな木材になるかを見極めて、機械に乗せて加工します。

 

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丸太が精密にカットされて、板や角材になっていきます。

 

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出来上がった板や角材はきちんと干して乾かします。

 

製材所の機械には色々なコントローラーが付いていて、精密な寸法で木材を切ることが出来るようになっています。

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製材所で出来上がった角材を、今度は刳物師(くりものし)という仕事の人のところに持っていって加工をお願いします。

2023年6月11日木材加工に挑戦!

 

刳物師は木を回転させながら、色々な形を作るプロフェッショナルです。

木のお椀やお皿などは、よく見かけるのではないでしょうか?

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刳物師の人は普段、ろくろを使って木を回転させながら特別な刃を当てて、色々な形に木を削っています。

 

角材を丸い棒にするときはろくろは使わず、違う機械を使います。

角材を機械の中に入れると丸い棒になって出て来ます。

機械の中に回転するカンナの刃のようなものが入っていて、角材を削っているそうです。

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今回参加者のみなさんが制作する木の汽車『moocle(モークル)』の材料は色々な人が関わって、繋がり合いながら出来上がっています。

お家にある木のものも、どうやってお家までやってくるのか、さかのぼって考えてみるのも面白いですね!

 

■木材加工に挑戦!

さて、木がどこからやってくるかしっかり学べたところで、moocleの材料を袋から出してみましょう。

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モニターに出ているパーツと、手元の材料を比べてみます。

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先生が用意してくれた設計図も良く見てみます。

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設計図は原寸大サイズで作られていて、パーツを上に乗せるとぴったりと置くことが出来ました。

どうやら立方体のパーツが足りなくて、タイヤ2つに穴が開いてないようです。

 

そうです!

「木材加工に挑戦!」講座では、足りないパーツを作ったり、ボール盤を使ってタイヤの中心にくぎを打つための穴を開けたりします!

 

■木を真っすぐ切ろう!

早速、角材に切る時のガイドになる線を引いてみましょう。

きちんと直角に線が引けるように、「指矩(さしがね)」という道具を使います。「矩(かね)」とは大工さんの言葉で「直角」のことだそうです。

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先生が教えてくれたおかげで、みなさん直角に線を引くことができました。

 

のこぎりを使って、印をつけたところに合わせて切ります。

バイス(万力)を使ってしっかりと角材が動かないように固定をして、両手でのこぎりを持って切ります。

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切ったパーツは、ちゃんとやすり掛けもしましたよ。

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■タイヤの真ん中に穴を開けよう!

穴の開いていないタイヤには、特別な道具を使って穴を開けます。

ま・あ・るの「わくわくアトリエ」には、色々な道具がそろっていますが、一体どれを使って穴をあけるでしょうか?

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答えはこれです!「ボール盤」という道具です。

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「ボール盤」を使って、たくさんの同じ大きさのパーツの「同じ場所」に「同じ形の穴」をあけるにはどうしたらいいでしょうか?

 

そのためにあらかじめ、講座が始まる前に坪井先生が「治具(じぐ)」という木の板をセットしていてくれました。

2023年6月11日木材加工に挑戦!

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「治具」は同じところを同じように加工するために使う、加工のガイドのようなものです。

先生が「治具」やドリルをどこまで下せるかも、きちんと準備していてくれました。

 

そのおかげで、レバーを下ろせば必ず同じ場所(タイヤのど真ん中)に同じ深さ、同じ形の穴が開くようになっています。

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坪井先生と一緒に、タイヤのパーツに穴を開けてみました。

中にはドリルにパーツが刺さったまま抜けなくなってしまう参加者もいました。

そんな時は、安池先生が言っていたように「安全に仕事をするためには慌てないことが大事」を思い出して、慌てずに作業を進めました。

最初はちょっと怖かったけど、頑張って穴を開けました!

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■moocleを組み立てよう!

全てのパーツがそろったら、moocleを組み立てます。

本体に先ほど穴を開けたタイヤを取り付けます。

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釘を使って、金槌で付けました。

タイヤには少し窪みが出来るように穴を開けたので、釘を最後まで打ち込んでも、釘の頭が外に出っ張らず、きれいに釘の頭が収まりました。

 

2つの台車はフックで繋げます。フックをねじ込むときの向きは時計回りです。

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先頭の台車に先ほど作った四角いパーツや、タンクパーツや煙突をボンドでつけたら完成です!

 

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皆さん個性的なmoocleが出来ましたね!

 

■杉と桧を比べてみよう!

坪井先生が採って来てくれた、葉っぱや実を使って、杉(すぎ)と桧(ひのき)の観察もしました。

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どっちが杉で、どっちが桧か分かりますか?

 

先生が森から採ってきてくれた杉と桧の枝には、新しい葉が生えてきているものもありました。

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下の方の葉と比べると新しい葉はふわっと柔らかかったですね。

2023年6月11日木材加工に挑戦!

 

触ってみた様子を言葉にしてみたり、絵に描いてみたりしました。

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moocleのタイヤは桧で出来ています。本体は杉で出来ています。

素材の特徴を活かして、それぞれのパーツに使われているそうです。

木の特徴をしっかり理解することで、何に使うと良いかも分かってきますね。

 

■凄いぞチェーンソー!

最後に林業士の安池先生からチェーンソーを見せてもらいました。

今回は電動のチェーンソーを持ってきてもらいました。電動のチェーンソーは電気とモーターで動きます。

今日のチェーンソーは普段安池先生が使っているチェーンソーよりも短い、バー(刃がついたチェーンが回転する板)の長さが30cmのチェーンソーです。

それでも使い方次第ではバーの長さの倍、直径が60cmくらいの木を切ることが出来るそうです。

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ただ、60cmも直径がある杉となると70年から80年くらいの樹齢の木になるそうで、実際には切ることは滅多にないそうです。

 

2時間の講座で、木に携わる色々な杣人のことを知ることが出来ました。

moocleを作った皆さんも、りっぱな杣人ですね。

是非、今日学んだことを周りの皆さんにも教えてくださいね!

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